振替口座簿(ふりかえこうざぼ)
振替制度において、株式に関する権利を管理するための法定帳簿のことを振替口座簿という。株主名簿は発行会社が備えるものであるのに対し、振替口座簿は振替機関(株式会社証券保管振替機構を指す)や口座管理機関(主に証券会社を指す)が備えるものである。
なお、振替制度は、多層構造の制度〔振替機関を頂点として、振替機関に口座を有する直接口座管理機関、直接口座管理機関に口座を有する間接口座管理機関、間接口座管理機関に口座を有する間接口座管理機関が、それぞれ自己に口座を有する加入者(前記のような口座管理機関が加入者である場合もあれば、投資家である場合もある)の権利を管理する制度〕であり、振替口座簿は加入者ごとに区分されるので、振替機関とすべての口座管理機関の振替口座簿を併せて、すべての株主の権利情報を把握することができる。
振替口座簿には株式の日々の権利変動に関する情報が記録されるが、振替機関や口座管理機関が備えるものであるため、会社が振替口座簿の情報を把握するための仕組みが必要となる。
その仕組みとしてまず挙げられるのは、振替機関から会社に対する総株主通知である。これは、会社が定めた基準日等の一定の時点に、振替機関が振替口座簿の情報を会社に通知するもので、原則、定期的におこなわれる。その他、株主が少数株主権等を行使する際におこなわれる個別株主通知(株主の請求により、振替機関が会社に振替口座簿上の当該株主の保有に関する情報を通知する)や、正当な理由があるときにおこなわれる情報提供請求(会社等が振替機関に、株主の記録に関する情報提供を請求する)がある。
なお、振替制度においては、株式の権利の移転の効力は振替口座簿に記録されることにより生じるため、その点では、振替口座簿の記録は株券が発行される会社の株券を所持することと同等の効力がある。