標準偏差・分散(ひょうじゅんへんさ・ぶんさん)
分散は変動のあるデータについて、その集団の平均からのバラツキ(散らばり)度合いを示す統計値で、標準偏差は分散の平方根。
これを金融商品の値動きに適用したのが価格変動リスク(ボラティリティ)であり、値動きの荒さを不確実性の度合いとして示す。具体的には、過去のある期間の値動きについて一定間隔刻み(日次、週次、月次など)で測った騰落率を集計し、その平均からのバラツキ幅を統計的に計算する。この平均からのバラつき度合いである標準偏差が大きいほど、価格変動リスク(ボラティリティ)が高く値動きが荒いことを示し、反対に標準偏差が小さいほど、価格変動リスク(ボラティリティ)が低く値動きは緩やかということになる。
一定間隔刻みで集計した騰落率の度数(頻度)分布が、騰落率の平均値を中心軸として左右対称の釣り鐘型の形状になる分布 (正規分布=Normal Distribution) では、「平均値±標準偏差」の範囲に全データの約7割が収まるという確率的な特性を持つ。ただし、金融商品の価格変動が厳密な意味での正規分布に従うことは実際上ほとんどない。このため、「平均±標準偏差の範囲に騰落率の約7割が収まる」という考え方は理論的な目安に過ぎなく、発生確率は小さいものの標準偏差を大幅に超す価格変動も起こりえる。こうした価格変動のリスクをテールリスクと呼び、特に、金融市場の混乱期には分布がマイナス方向に偏るケースや、裾が極端に広く厚い“ファット・テール”という現象が確認できる。
標準偏差は求めた値を年率換算(年間での変化率を計算)して使うのが一般的だ。具体的には、日次、週次、月次騰落率から計測した標準偏差について、1年=250(営業日)=52(週)=12(月)の各250、52、12の平方根を掛けた値が年率換算値になる。それぞれの平方根を掛け合わせるのは、標準偏差の2乗である分散が計測期間(時間)の長さに比例して大きくなるというランダム・ウォークの考え方に基づく。