為替の経常的取引(かわせのけいじょうてきとりひき)
「貿易」およびサービス等の取引から発生する「貿易外収支」を合わせたものを「経常収支」というが、経常収支の収支尻に伴って発生する為替の売買の需要が存在する。これを経常的取引と呼ぶ。一方、実物取引ではない取引、すなわち金融取引に対応して為替の売買が行われる。これを、広い意味で資本移動に伴う為替の売買と呼ぶ。
例えば、日本全体として1000億ドルの黒字が発生したとする。仮に、輸出が4000億ドル、輸入が3000億ドルだったとする。
輸入する経済主体と、輸出をしている経済主体は同一ではないから、輸入業者は3000億ドルのドルを必要とし、輸出業者が4000億ドルのドルを獲得することになる。
輸入業者は輸入代金を調達するために、為替市場で3000億ドルのドルを購入しなければならない。一方、輸出業者は獲得した4000億ドルを円に換金することで日本国内で使用可能となる。
こうして4000億ドルの輸出と3000億ドルの輸入で生じる1000億ドルの黒字が発生する場合、為替市場では1000億ドルのドル売り超過の状態となる。
こうした視点から考えると、経常収支の黒字が拡大することは、ドル売り需要が増大する要因となる。逆に経常収支の黒字が減少する場合には、ドル売り需要が減少することを意味する。
為替の需給を決定する1つの柱である実物需給を伴う為替取引は、表現を変えれば、経常収支黒字の変動をみればよいということである。